木育(もくいく)は、2004年に北海道の木育推進プロジェクトチームから生まれた造語で「子どもをはじめとする全ての人が木を身近に使っていくことを通じて、人と森や木との関わりを主体的に考えられる豊かな心を育む」ことを目指す教育概念です。
木の持つ魅力・ぬくもりを感じることは「地球温暖化防止」「持続可能循環社会の形成」などの自然環境問題を考えるきっかけにもなります。
この記事では、木に触れて遊んだりものづくりを楽しみながら、豊かな心を持った人に育てる木育とその活動での効果について紹介します。
木育で得られる効果
プラスチック製のおもちゃ・食器は安価で扱いやすく便利ですが、環境のことを考えるならば優しい素材ではありません。木製品にはプラスチックにはない利点が多くあります。
さらに木は人に対し、さまざまな効果をもたらすことが知られています。木が生み出す影響と環境保護をつなげるのが木育の取り組みです。
想像力を育む
木のおもちゃは、積み木・型はめパズルなどのシンプルなつくりの製品がほとんどです。木という性質上、光や音を出したり複雑な構造にすることは難しいためです。
むしろシンプルなつくりだからこそ子どものイマジネーションを引き出し、自分なりに工夫して遊ぶようになります。最新技術を使ったおもちゃは、はじめは面白がりますが、すぐに飽きてしまいます。
受け身ではなく主体的に考えて遊ぶことで問題解決能力を自然と身に付けることができます。
情緒が安定する
子どもの成長において幼児期はとても重要な時期です。幼児期から公園や森へ出かけて実際の木に親しみ、日常生活で木製のおもちゃなどを使うことで、木の匂い・木目・手触りによって五感が刺激され情緒が発達します。
木製品は湿気を適度に吸い込む性質と断熱性があります。触れたときに過度な冷たさを感じたり、べったりと肌にはりつくことがなく、自然なぬくもりが伝わってきます。心地よい手触りは精神を安定させ集中力を高める効果が期待できます。
リラックス効果
木は人のストレスを和らげてリラックス効果をもたらすことが検証されています。精神が安定すると前向きな気持ちになり、免疫力が高まるといわれています。
ある小学校では、木製の机と椅子を導入したところ、児童たちが意欲的になり、授業中にあくびをすることが減少したという調査結果が出ています。
木育に繋がる取り組み
木育は難しいことではなく、身近なところから始めることができます。家庭でできる木育をまとめました。
木製食器を使う
木の食器やカトラリーにはプラスチック・金属にはないぬくもりがあります。陶器やガラスに比べて強度が高く、子どもが落としても割れにくいので扱いやすいです。
近年、大人の間でも木でつくられたお弁当箱の「曲げわっぱ」が注目を集めていますね。
天然素材が余計な水分を吸湿し、ちょうど良い加減に水分調節された美味しいご飯を作り出してくれます。おかずも傷みにくく1年を通して快適に使えるので、湿度の高い日本において最も適したものといえます。
木のおもちゃで遊ぶ
木製品の持つ魅力は、子どもの想像力を育むとともに、古くなっても劣化しにくいところにもあります。
適切な保管をしておけば長く使えるので、数年でゴミになることはなく環境に優しい素材なのです。大きくなってから触っても懐かしいおもちゃがあるのは素敵ですね。
木を使った工作をする
木を削ったり組み合わせたりして新しいものを作り出す体験も、創意工夫をしながら指先を使うので、脳に刺激を与えて想像力を高めます。幼児から体験できる木工体験の教室や、キットも販売されているので親子で楽しむことができます。
木が用いられた空間で過ごす
手や足が木に触れると脳の前頭前野が沈静化し、副交感神経が優位になることによるリラックス効果があることが分かっています。
実用面においても木材は優れた点があります。パイプ状の細胞がクッションの役割をするため、大理石に比べて2~3倍の衝撃吸収能力があります。床や壁に木材を活用することは、転倒などによる思わぬけがの防止に繋がります。
実際に公園や森へ行く
子どもたちが木のおもちゃ・木工体験などを通し、木のぬくもりや心地よさを感じたら公園や森へ行き、それらが「生きた木」と繋がることを教えましょう。
木が多い場所は、草花が豊富で苔やキノコが生えており、さまざまな昆虫・小動物も生息しています。自然の音や匂いを感じながら、図鑑と見比べて同じ木を探してみるのも楽しい遊びですね。ふだんと違う環境で木に触れることは、子どもの脳に良い刺激を与えます。
木育におすすめの絵本
木や森に関連していたり、教育現場でも使われる絵本をまとめました。
びっくりまつぼっくり
松ぼっくりの不思議が描かれています。瓶詰め松ぼっくりの手品は実際に大人が作って絵本を読み聞かせながら見せると子どもたちは大喜び!と評判です。
三びきのやぎのがらがらどん
原作はノルウェーの昔話です。三匹のお腹を空かせた山羊が山の草場へ向かうために一本橋を渡るお話です。
はっぱのおうち
さちが木の葉の家で雨やどりをしていると、カマキリ・チョウ・コガネムシも雨やどりにやってきます。虫たちとの交流を描いており、雨の日に読みたくなる絵本です。
きはなんにもいわないの
お父さんに「木になって」とおねだりをした、すーくん。さっそくお父さんの木で木登りに挑戦してみるものの、うまくいきません。自然の風を感じる小さな冒険のお話です。
木育の概念と得られる効果まとめ
木製品に手を触れると、なんだかとてもほっこりとした優しい気持ちになりますね。子どもの頃から森へ出かけたり、身近な木を使う文化に慣れ親しむことで、豊かな感性が育っていくのではないでしょうか。
昔は身の回りのものには木が多く使われていました。今、日本では国産木材の需要が減り、人工の森林が放置されて森が荒れてしまった結果、さまざまな問題を抱えています。
代表的な問題点として多くの現代人を悩ます「花粉症」があります。また、収穫期を迎えても伐採されない状態ではCO2の吸収源にもならず、日光が届かないため根が張らずに土が痩せ、土砂崩れなどの大きな災害へと繋がる危険性も指摘されています。
適切に木を伐採して使うことは環境破壊の抑止になります。子どもたちと一緒に木に触れそして木を使うことで、より良い環境を次世代に残す貢献へと繋がる木育に取り組んでみませんか?
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